福井鉄道は、利用状況の変化や運転士などの労働力不足を背景に、日中時間帯を中心に約2割減便する福武線のダイヤ改定を2023年10月14日(土)に実施します。
好調から一転“急ブレーキ”…来春に値上げ予定
かつての福井鉄道は慢性的な赤字体質で、多額の損失を計上した2007年(平成19年)に自主的な経営再建を断念し、翌年、地元経済団体や自治体などが支援する第三セクターとして再出発しました。2009年(平成21年)には国内で初めて「鉄道事業再構築実施計画」が国から認定され、上下分離方式による再建と、国と福井県、沿線3市(福井市、鯖江市、越前市)による公的補助の枠組みが決定しました。
設備投資の余力がついた同社は、新駅設置やパークアンドライド駐車場の整備、新型低床車両の導入、バリアフリー化などの利用促進策を矢継ぎ早に打ち出しました。2016年(平成28年)にえちぜん鉄道との相互乗り入れを開始したほか、福井駅西口交通広場への延伸も実施しました。これらが功を奏し、160万人程度で推移していた輸送人員は徐々に増え、2016年度は200万人の大台に達しています。
順調に推移していた経営ですがコロナ禍の影響は大きく、特に日常利用や観光客など定期外利用が急速に落ち込んで回復に至っていません。急激な電気料金や資材費の高騰に加え、運転士や技術職員の不足を解消するための賃金水準確保など、必要経費も増大しています。これらを受け、収支改善に向けて2024年3月に平均改定率17.6%の運賃改定を行うこととし、国に認可申請を提出しました。
列車のワンマン化や駅の無人化など要員体制の見直しをすでに行ってきたものの、運転士の労務負担を軽減する必要があるとし、ダイヤ改定で輸送力の適正化が図られます。1日あたり運転本数は平日が現行の103本から改定後は80本に、休日は98本が76本となり、平均で約22%の減便となります。
(福井鉄道ダイヤ改定前後のたけふ新駅・田原町駅の時刻表比較、輸送人員の推移など詳細は下の図表を参照)
停車駅2駅のみ「臨時急行」って?
朝夕の通勤・通学時間帯は運転本数がおおむね維持されますが、利用が低調な日中時間帯は上下計16本の急行列車が運転取り止めとなり、普通列車のみ30分間隔で運転するダイヤとなります。19時台以降の夜間も減便の対象となり、運転頻度は現行の約30〜45分間隔から約40〜55分間隔へと広がります。
また、現行ダイヤでえちぜん鉄道との日中の相互直通列車は福武線内を急行運転しますが、改定後は福井駅経由の普通列車が直通運転に充当されます。急行が停車しない駅からも直通列車を利用できるメリットがありますが、所要時間が大幅に増加することによる利便性低下が懸念されます。直通列車の1日あたりの運転本数は現行のまま変わりません。
線路保守作業時間を拡大して安全輸送を確保する必要があるとして、始発列車の時間繰り下げ、最終列車の時間繰り上げも同時に実施されます。ただし、曜日により異なる終電時刻が改定後は統一されるため、土休日については上下線とも繰り下げとなります。
新ダイヤの全体を見ると、たけふ新駅〜田原町駅間を通しで運転する急行・普通列車のみ(直通列車、福井駅経由を含む)というシンプルな構成です。現在、朝時間帯に設定されている福井駅を始発・終着とする列車や、神明駅始発の下り列車はいずれも全線通しの列車に置き換えられます。福井駅発・たけふ新駅行で1日1本のみ存在しているレアな「区間急行列車」の設定も廃止されます。
その例外として新たに登場するのは、改定後に季節列車としてたけふ新駅〜福井駅間で運転する「臨時急行列車」です。「多様な乗車需要に応える」ことを目的としており、停車駅は神明駅と福井城址大名町駅の2駅のみという速達性重視の設定です。運転日や運転本数、時刻などは現時点で明らかになっておらず、詳細は運転する際に告知するとのことです。